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🦷 成人矯正で起こる歯根吸収とは?
~力のかかり方との関係をわかりやすく解説~
💡 歯根吸収ってなに?
矯正治療で歯を動かすとき、歯の根(歯根)の先端がわずかに短くなることがあります。
これを歯根吸収(しこんきゅうしゅう)と呼びます。
歯根吸収は、歯に力をかけて動かす際に起こる生体の自然な反応の一つで、多くの場合は軽度で問題にならない範囲です。
ただし、力のかけ方や治療期間によってはリスクが少し高まることがあります。
⚙️ 歯根吸収が起こる仕組みと力の関係
矯正中に歯の根が短くなる背景には、「どんな力を・どのくらいの期間かけたか」が大きく関係します。
最新の研究では、次のような要素が重要だとされています。
① 矯正の力が強いほど、吸収のリスクは高くなる
歯を動かすための矯正力が強すぎると、歯の根の先端(根尖部)に過度な圧力がかかり、根の表面の細胞が損傷して吸収が起こりやすくなります。
また、弱い力でも長い時間かけ続けると、結果的に同じように吸収が進むことがあります。
👉 「強すぎる力」も「長くかけすぎる力」も、根に負担をかけやすいということです。
② 継続的な力より「間欠的(休みのある)力」の方が安全
連続的に力をかけ続けるよりも、休みを挟みながら力をかける方法(間欠的な力)のほうが歯根吸収のリスクが少ないと報告されています。
これは、組織が力に慣れる「回復の時間」を持てるためです。
最近のマウスピース矯正(アライナー治療)などでは、この「間欠的な力」が自然にかかる仕組みになっている点も注目されています。
③ 歯の動かす方向によっても違いがある
歯をどの方向に動かすかも、歯根への影響を大きく左右します。
押し込み方向(侵入・圧下)
→ 根の先端に力が集中しやすく、吸収が起こりやすい。
一部の研究では、押し込み方向では引き出し方向の約4倍のリスクがあると報告。
引き出し方向(挺出)
→ 比較的リスクが低いが、根の中間部分に吸収が起こることも。
つまり、歯を上下方向に動かす治療では、横方向の移動よりも慎重な力のコントロールが必要です。
④ 根の形と長さも影響する
根の先端が細い歯や短い歯は、同じ力でも影響を受けやすい傾向があります。
また、根の長さが短い歯では、わずかな吸収でも相対的な影響が大きくなるため、治療中は特に丁寧なチェックが必要です。
👆患者さんが気をつけたいポイント
- 無理に強い力をかけず、「ゆっくり確実に」動かすことが大切です。
- 治療中は定期的にレントゲンで歯根の長さを確認してもらいましょう。
- 痛みや違和感が長く続く場合は、早めに主治医へ相談を。
- 若い年齢ほど骨の回復力が高く、吸収しにくい傾向があります。
📘まとめ
- 歯根吸収は、矯正中の力のかけ方や方向、期間に関係しています。
- 「強く・長く」より、「弱く・ゆっくり」が歯に優しい治療法です。
- 最近の矯正装置(ワイヤーやアライナー)は、この力の調整をより細かく行えるよう進化しています。
🔖 参考文献
・Harris et al., Cheng et al., Paetyangkikul et al.
“Factors related to orthodontically induced root resorption.”
PMC – PubMed Central(オープンアクセス)
・「成人矯正治療における上顎前歯の歯根吸収に関する臨床的研究」
(北海道大学・日本矯正歯科学会誌/J-STAGE掲載)
著者 Author

2014年に歯科医師免許を取得し、矯正一筋で治療をしてきました。
患者様の歯列の仕上がりを0.1mm単位で細かく調整し、より早く終わられられるよう効率的な治療を常に意識して治療に取り組んでおります。
小児矯正から成人矯正、顎変形症の矯正等すべての矯正治療に対応します。
矯正治療は一生に一度の治療になると思いますので心を込めて、患者様それぞれに合った最高の治療結果を提供いたします。